Electronic Entertainment Expo 2009現地レポート
SCEA注目タイトルレポート
「God of War III」、緊張感のあるアドベンチャー「Heavy Rain」カメラを使って目に見えないものと交流する「EyePet」、「Invizimals」
Sony Computer Entertainment America(SCEA)は、E3において大きなブースでタイトルをアピールする一方、積極的にプレス向け説明会を開催し、いくつものタイトルを紹介していた。本稿では注目タイトルレポートとして4本のタイトルを紹介したい。
会場で1番人気の「God of War III」、クローズドブースでのみ出展となったアドベンチャーゲーム「Heavy Rain」、そしてカメラと連動してペットとの交流を楽しめる「EyePet」。これら3本はPS3タイトルだが、PSPでも1本「Invizimals」を取り上げたい。「Invizimals」もPSP用のカメラを使ったユニークなコンテンツで、「EyePet」と共にSCEAの技術的なチャレンジの作品である。
■ サイクロプスの目をえぐり取り、神の頭すら引き抜くクレイトスの大活躍!「God of War III」
横倒しにしたセントールの腹を切り開き、内蔵をひき抜く。力任せの暴れっぷりだ |
キマイラの胸に刃を突き刺しさらに攻撃 |
会場で1番人気だった「God of War III」の説明会では、試遊台でプレイできるステージの“その後”を見ることができた。今作では神の住む街オリンポスへ巨人のタイタンが攻め込み、プレーヤーであるクレイトスはその混乱に乗じてオリンポス深くに進入していく。神の軍、魔物どちらもが彼の敵であり、立ちはだかる敵を砕き、切り、引きちぎりながらクレイトスは進んでいく。
羊とライオンの頭を持ち、蛇のしっぽの生えたキマイラを、尾を切り落とし、ライオンの顔をたたきつぶし、羊の頭にもぎ取った角を突き刺してとどめを刺したクレイトスの前に、2人の敵が立ちはだかる。オリンポスを襲う巨人タイタンと、炎の馬車に乗りタイタンと戦うアポロンだ。クレイトスは巨大な石弓を操作し、アポロンの馬車を打ち抜く。アポロンはタイタンに叩きつけられ、地面に倒れる。
アポロンにとどめを刺そうとするクレイトスの前に、オリンポスの兵士達が現われ、盾を掲げてアポロンを守る。防御は強力でクレイトスの攻撃でもびくともしないそこに1つ目の巨人、サイクロプスが現われる。クレイトスは襲いかかってくるサイクロプスの背に飛び乗り、首筋に刃を突き立てる。その痛みに、サイクロプスはめちゃくちゃに腕を振り回す。クレイトスはさらに何度も刃を突き刺し、サイクロプスは暴れ回ってオリンポスの兵をなぎ倒してしまう。クレイトスはサイクロプスの巨大な目の中に手を突っ込み、両手でその眼球をえぐり出してとどめを刺す。
そのままの勢いでクレイトスは倒れているアポロンの背に飛び乗り、アポロンの頭を両手でつかむと、力任せに首を引き抜いてしまう。アポロンは外見は普通の人間に近いが、太陽神なだけにその首は命を失っても光を放っている。さらに首を掲げると前方に強烈な光を発射する。クレイトスは、アポロンの首をランタンのように掲げながら暗闇を進む。襲いかかってくる骸骨兵士をアポロンの光ですくませて倒し、遙か上に広がる世界を目指して、背中から翼をはやして飛翔していく……。
すさまじい暴力描写と迫力に圧倒させられるデモンストレーションだった。この描写はプレーヤーを選ぶかもしれないが、「人外の戦い」をここまでの迫力で見せてくれるのは本作ならではだろう。クレイトスの冒険は「God of War III」においていったん終結するという。もちろん外伝など、今後も関連した作品が作られることもあるかもしれないとのことだ。現在の開発は70パーセントということで、これからさらにどう作り込まれていくか楽しみである。
出展されていた試遊台からの撮影。説明会ではさらに先のステージを見ることができた | ||
赤い溶岩に体を覆われた巨人タイタン。同じオリンポスを目指しているが、クレイトスは彼らとも敵対しているようだ |
■ 謎の殺人者を追う、緊張感の漂うアドベンチャー「Heavy Rain」
思考が周囲を回る。ユニークなインターフェイスだ |
女性ジャーナリスト。胸元を大胆に開けてセクシー度アップだ |
「Heavy Rain」は、殺人現場に折り紙を残すという謎の殺人者を追うアドベンチャーゲームだ。4人のプレーヤーキャラクターが用意されていて、ストーリーを進めながら真相を究明していく。本作の大きな特徴は、「プレーヤーキャラクターが死亡してもストーリーは続く」という点にある。4人のうち誰かが倒れてもゲームオーバーにはならず、ストーリーが変化する。マルチストーリー、マルチエンディングのタイプのゲームだ。
もちろん、4人全員が死亡してしまったらゲームオーバーになる。また何度もやり直し全員が生き残るようにプレイしてもいい。どのようにストーリーが変化していくかを見るのも本作のおもしろさだ。ちなみに、4人のキャラクターのストーリーは章で区切られていて、1人の主人公をラストまでプレイしてから次のキャラクターをプレイ、ということはできない。4つのストーリーが進行すると共に複雑に絡み合っていくシナリオが、本作の大きなセールスポイントだ。
「Heavy Rain」は、インターフェイスが非常に独創的だ。今回はFBI捜査官と女性ジャーナリストの2つのストーリーを見ることができた。ゲームでは、体力バーやパラメーターなどは全く表示されない。例えば車のドアを開けるときなどは、3Dで表示されている空間に矢印が浮かび上がり、その通りにボタンを押せば進む。通常のシーンではボタンを押すとキャラクターの周囲に「寒さを意識する」、「周りを見回す」、「考える」、「声をかける」といったキャラクターの思考が浮かび上がり、これを選択することで様々なアプローチを行なっていく。
戦闘などのアクションシーンは、その瞬間に表示される指示に従えば有利な展開になり、入力を失敗すると不利になる。FBI捜査官の場合、怪しげな自動車スクラップ工場を調査することになる。捜査官は特殊なグローブとサングラスを装備しており、これをつけることで血液反応や指紋などを感知し、グローブで触ることでFBIのデータベースから瞬時に情報を呼び出し調査することもできる。本作は現在より少し未来の設定になっていて、未来の警察捜査を体験できる。
捜査官のストーリーでは、屈強な黒人容疑者と戦う羽目になる。この捜査官は薬を常用しなくてはいけない体質で、これが絶体絶命のピンチを招いてしまう。車に閉じこめられたままプレス機に押しつぶされそうになるシーンでは、瞬時にコマンドを入れなくてはいけない状況になり、緊張感のあふれる場面を体験できた。
女性ジャーナリストのストーリーは、ちょっとやり過ぎというくらいのお色気演出が楽しかった。ダンスクラブ経営者に話を聞くため向かうが、全く相手にされない。ここでジャーナリストは女性トイレに入り、濃いアイシャドウを塗り、胸元を大きく開け、スカートの裾をちぎってセクシーさを大幅アップしてからダンス台に立ち、経営者を誘惑する。
お色気作戦は成功し、事務所の奥の経営者の部屋に行くことができるが、持っていた拳銃を奪われ突きつけられてしまう羽目に。そこで経営者は「服を脱げ」という命令を突きつける。ジャーナリストはわざとじらすように服を脱ぎ、妖しく腰を振り、経営者がデレデレになったところを逆転する。非常に艶めかしい演出で開発者の気合いが感じられた。
作品全体の雰囲気は落ち着いていて、常に緊張感が漂っているところが好感が持てる。捜査官の格闘シーンや、ジャーナリストの経営者とのやりとりなど、演出にも大きな期待が持てる。シックな大人向けアドベンチャーという印象で、早くプレイしてみたいと思わせる作品だった。特にFBI捜査官の科学捜査システムは、どのように活用されるか楽しみである。
サングラスと手袋の機能を使って科学捜査を開始。証拠を見つけ出せ | ||
屈強な黒人容疑者の前に絶体絶命のピンチに。生き残れるだろうか | ||
ダンスクラブ経営者に迫る女性ジャーナリスト。必要な情報を得ることはできるだろうか |
■ カメラを通じて見えてくるペットと一緒にゲームをプレイ「EyePet」
カードから呼び出される猿型ペット。実際に手を伸ばすことで反応する |
ペットはプレーヤーのセンスでカスタマイズできる成長要素もあるという |
「EyePet」は、PS3用USBカメラPLAYSTATION Eyeに対応したユニークなペットコミュニケーションゲーム。発売時期は未定だ。プレーヤーは、ソフトに同梱されている魔法のカードを使うことでカメラに写った空間にペットを呼び出すことができる。
ペットは小さな猿の姿をしている。現実世界では目に見えないが、ペットのいる空間に手を伸ばすことで、ペットは触られたように反応する。なでると気持ちよさそうな表情を見せ、くすぐるとうれしそうにはしゃぐ。また、ペットの前でものを振ると飛びかかったりとコミュニケーションを楽しむことができる。プレーヤーが歌を歌うと、ペットが合唱したりもするという。
ペットとは様々なミニゲームで一緒に遊ぶことができる。魔法のカードは、おもちゃを呼び出すなど様々な機能があり、シャボン玉を出す像やトランポリンを出してペットと遊ぶことが可能だ。コントローラーを使うことでテーブルの中央に穴が開き、様々なアイテムが飛び出してくる。診察台のようなものもあって、そこにペットが乗り魔法のカードをペットにかざすと、レントゲンのようにペットの状態が映し出される。ペットの体調に合わせたアプローチもしていく必要があるという。
ペットは親密度のパラメーターもあり、遊びを繰り返すことで成長していく。ミニゲームは多彩なものが用意される予定で、ペットとどんな遊びで楽しい時間を過ごすかというのが本作のメインになるようだ。面白いギミックとして紹介されたのが、「絵」を作ったギミック。プレーヤーが飛行機の羽と胴体、プロペラをシンプルなラインで書き出しカメラにスキャンさせると、ペットがそっくりの絵を描く。その絵が完成した瞬間、絵から物体が抜け出し、飛行機に組み上がった。
ペットが飛行機に乗ると、飛行機が離陸する。この飛行機は、PS3のリモコンで操作することができる。この飛行機を使ったミニゲームも用意されているという。この他、車を作る機能などもあるとのこと。絵から何かが飛び出るという部分に関しては、どこまで自由度が広がるかは今のところ未定だが、このギミックを活かしたゲームには期待したいところだ。
個人的に、ペットはもちろん、メニューを使うことで床に穴が開き、様々なアイテムが呼び出されるというギミックが面白かった。現実にはないものが、モニター世界に存在するという感覚は、SFっぽい雰囲気があって面白い。ペットがどこまで作り込まれるかも楽しみである。
手を伸ばして触ってみたり、魔法のカードをおもちゃに変えて遊ぶことができる。カスタマイズアイテムも多数用意されている | ||
描いた絵を見せると、部品が飛び出し飛行機に。車を作ったり、様々な遊びができるようだ |
■ PSPのカメラで見えないモンスターを捜し出して戦え!「Invizimals」
PSPのカメラを見ると映し出される手のひらの上のモンスター |
モンスター同士の戦いは派手で見応えがある |
「現実では見えないものが、カメラを通じて見えてくる」というコンセプトによりフォーカスしたのが、PSPで発売される「Invizimals」だ。発売時期は未定。このゲームはPSP Cameraを使ったゲームで、目には見えないモンスターを呼び出し戦わせるのがコンセプトだ。
このゲームのおもしろさは、PSPのカメラを使って見える「もう1つの現実」にある。この世界には目には見えないモンスターが生息していて、プレーヤーはPSPを使ってそれらを感知し、捕獲し、戦わせて育て上げることができる。現実ではなにもない空間でも、モンスターが激しく争っている世界がPSPを通じると見えたりと、男の子の夢を実現したようなゲームなのだ。
PSPとカメラと共に、本作で重要なアイテムとなるのが魔法陣型のプレートだ。モンスターはこのプレートから召喚される。PSPでプレートを映し出し、モンスターを呼び出すと魔法陣が光り輝き、モンスターが出現する。モンスターは指で触ることもできる。モンスターはおもちゃのような丸っこくシンプルなデザインだが、蛇型や蚊型など特性を活かした動き方をする。プレートを手に持つと、モンスターを手のひらにのせることもできる。
プレーヤーはまず、モンスターを捕獲するところからゲームを始める。モンスターは出現場所と好む場所が決められていて、ゲームをレーダーモードにすると、カメラに写った情景をスキャンすることができる。モンスターは探知音で位置を知ることができ、モンスターの出現する場所に近づくと音が大きくなり、レーダーは出現場所にフォーカスされていく。その場所にプレートを置くと、モンスターが出現する。モンスターはそれぞれのタイプで捕獲方法が決められている。蚊型モンスターなら叩き潰すようにすると捕まえられる。つかんだり叩いたり様々な捕獲方法があるという。
捕まえたモンスターは、ストーリーモードや友達との対戦プレイで戦わせることができる。戦闘では、モンスターは様々な技を使って相手を攻撃する。目に見えない世界の激しい戦いというコンセプトが魅力的だ。プレーヤーは、様々な行動をすることでモンスターに技を繰り出させる命令をさせることができる。PSPのカメラについているマイクに息を吹きかけると、モンスターが凍てつく息吹をはき出したり、モンスターの上で空気をかき回せるように手を動かすと、竜巻が起きたりする。戦闘を繰り返すことでモンスターは成長していく。
捕獲するモンスターや、ストーリーモードで敵となるモンスターは出現時間が決められている。それは夕飯時になってしまうかもしれない。食事の準備をしているとき、子供がお母さんに向かって「ごめん、これからサソリモンスターを捜し出さなくちゃいけないんだ!」と叫んで、PSPを片手に家の中を探索し始めるということもあるかもしれない。ストーリーモードでは、プレーヤーは見えない世界で進行しつつある陰謀に相棒のモンスターと立ち向かうことになるという。
今回SCEAは、手に持つデバイスがラケットや剣に変わってゲームができるモーションコントローラーを発表した。「EyePet」や「Invizimals」も同じベクトルを持つゲームと言えるだろう。ゲーム世界と現実世界がリンクし、現実世界のアクションがゲーム世界にリンクしていく技術は、AR(Augmented Reality:拡張現実)と呼ばれている。ソニーはこれまでに、「THE EYE OF JUDGMENT」などで拡張現実に取り組んできた。今後、どんな技術とゲームが現われるのかに注目したい。
目に見えないモンスターは、魔法陣を通じてこの世に現われる。レーダーモードでモンスターのいる場所を探ろう | ||
モンスターは戦いを経ることで成長していく。現実には白い無機質なプレートの魔法陣が、PSPの画面では光り輝いたりと、現実の世界が2重写しになったかのような「拡張現実」の感覚が楽しい |
http://www.e3expo.com/
□SCEAのホームページ(英語)
http://www.us.playstation.com/
(2009年 6月 6日)